伏見稲荷大社火焚祭(ひたきさい)は秋の収穫の後に五穀豊饒などを万物を育て、農業の神とされている稲荷大神に感謝する神事です。ちなみに稲荷大神は宇迦之御魂大神・佐田彦大神・大宮能売大神・田中大神・四大神の総称です。
火焚祭では先ず本殿で祝詞奏上などの神事が行われます。その後本殿から千本鳥居近くにある神苑斎場(しんえんさいじょう)に移動します。神苑斎場では4月の水口播種祭(みなくちはしゅさい)・6月の田植祭(たうえさい)・10月の抜穂祭(ぬきほさい)と続く農耕神事により、栽培された稲の稲藁や全国から奉納された数十万本の願いが書かれた火焚串(ひたきぐし)が3基の火床で焚き上げ、祈願成就を願います。なお火焚祭中には神職が大祓詞(おおはらえことば)を奉唱し、罪障消滅(ざいしょうしょうめつ)・万福招来(まんぷくしょうらい)を祈願します。また巫女による里神楽(さとかぐら)も奉納されます。
火焚祭の後の夕方からは神楽人の長が舞う御神楽(みかぐら)・人長舞(にんちょうまい)が本殿前庭で奉納されます。
水口播種祭では稲種を苗代田に撒く前に稲荷大神に生育を祈願します。
田植祭では稲荷大神に供饌されるご料米(ごりょうまい)の稲苗を神田に植えます。
抜穂祭では稲荷大神の働きにより、水口播種祭から続く一連の農耕神事で栽培され、稔った稲を刈り取ります。
火焚祭は宮中で古くから行われている新嘗祭(にいなめさい)が起源とも言われています。新嘗祭では11月23日に天皇が五穀の新穀を全ての神々である天神地祇(てんじんちぎ)に供え、自らも食して収穫に感謝しました。新嘗祭は宮中三殿の近くの神嘉殿で行われていたそうです。新嘗祭は室町時代に民間にも広まり、竃(かまど)の神の祭り・火の神の祭りへと転化していたそうです。
神楽は神社の祭礼などの神事の際、神に奉納する歌舞です。神楽は天照大神(あまてらすおおかみ)が天の岩戸に隠れた際、天鈿女命(あめのうずめのみこと)が舞ったのが起源とも言われています。神楽には宮中で行われる御神楽と神社など民間で行われる里神楽に大きく分けられます。